陥りやすい失敗例から知る問題が大きくならない生前贈与の方法

現金を複数の人で分けるのは簡単ですが、土地を分けるときにはいろいろ注意しなければなりません。

節税対策のためだけに自分の土地を生前贈与するときにある人の失敗例がとても参考になります。

Fさんは自宅に隣接して広い土地を持っていました。かつて商売をしており、使用人の部屋まで設けていたのです。事業は清算して久しく一部を駐車場としているぐらいですが、これを4人の子とその孫6人がいますので、毎年、無税で贈与できる範囲で段階的に10人の名義に移していきました。

1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。年数はかかりますが、こうやって土地を贈与していったけっか、数年後にFさんが亡くなるまでに贈与はすんでおり、この土地に関する相続税はゼロでした。みごとな節税です。

しかし、あまりにも急いだせいもあって、子と孫の人数と、その不公平感のないように分割することばかりに気を取られてしまい、事後のことをまったく考えていませんでした。

このためFさんが死亡したのち、この土地をどうするのかについて子たちの間でかなりもめてしまいました。共有なので、貸したり、売却するには全員の同意が必要になります。自分の持ち分だけを勝手に担保に入れてお金を借りることもできません。

「せっかく貰ったのに使えない!」というわけです。とくに子の一人は女性で結婚して遠方にいるため「持っていてもしょうがない」と他の兄弟に買い取ってもらうことを願っていましたが、長男は自分の事業がうまく行かずすでに借金が増えていることもあって、とても買い取れる状況ではありませんでした。

話し合いの結果、専門家に相談して土地を分割し、共同所有ではなくそれぞれの持ち分があるように切り分けるために、大変な手続と費用がかかってしまったそうです。また、子たちの話し合いもしだいに険悪になって、一時は「口も聞きたくない」と感情的な対立になってしまいました。

この場合、土地はほぼ空き地なのでまだしもですが、これが事業承継にも関係したとしたらさらに話はややこしくなります。たとえばこのとき子の1人がその場所で商売をしている、といったケースです。

よかれと思って遂行した生前贈与が、このように死後に問題になるようでは困ります。このような「あとで分割するのがこまる財産」については、生前贈与による節税もけっこうですが、多少の納税は覚悟の上で、みんなが使いやすい、納得できるカタチにして相続した方がいいのです。

土地に限りません。「これしかない」といった財産は、金銭的価値を超えて争いの種になりかねません。母の形見、先祖伝来の宝刀など、誰が受け取るかは金銭だけではなくプライドの問題にもなりますので要注意です。

専門家がよく言うのは「土地などわけられないものは、親子の1対1の垂直関係での共有はいいけど、兄弟といった水平関係の共有はトラブルの種」ということ。生前に決着させたい場合、あとで禍根が残らないやり方で、贈与しておきたいものです。