陥りやすい失敗例から知る不動産を失うことなく相続する考え方

不動産は相続する財産の中でも大きなものになります。現在の政権が推進している脱デフレ策が軌道に乗れば、インフレ傾向が強くなるはずです。みなさんが所有されている不動産の価値も、上昇する可能性が高くなります。

一方、相続税の控除は見直されて、徐々に課税範囲が拡大していく傾向になっています。政府は財政再建のためにバランスを取らなければなりませんので、税収を増やす方向になるはずです。もちろん、必要な減税もしますが、相続税はむしろ強化されていくと見ていいでしょう。

不動産についての相続で問題になるのは、「そっくり受け継いでほしい」という気持ちがある一方、そうなると相続人に平等に分配することはできなくなってしまう点です。不動産が唯一といっていい財産だった場合、そういうことが起こります。

事業を営んでいたWさんの相続もそれで失敗しました。Wさんには2人の子がいて、長男は公務員になり官舎暮らし。二男は家業を継ぐことになって、必死に経営をしていました。それでも、事業兼自宅の土地は、銀行からの借り入れのために抵当に入っていました。

残念だったのは、たまたま相続が発生する前、つまりWさんが亡くなる前の段階では、この事業の景気がとても悪く、借り入れをいっきに返済できるほどの他の財産はありませんでした。

相続では、抵当権のついた土地の相続は、抵当権も引き継ぐことになります。二男はそのつもりでいました。長男も「どうせ借金があるから」と相続放棄を決めて、そっくり二男のものになりました。

しかし、景気はさらに悪化してしまい、二男は借金の返済が滞り、結果的にその土地は競売にかけられてしまったのです。

亡くなったWさんの「家業を続けてほしい」という願いも虚しく、二男の代で事業は潰えたのです。

長男が悔やみきれないことは、もし二男がそこまで大変であることを打ち明けてくれていれば、援助ができたのではないか、ということでした。長男は公務員でいまのところ借金はなにもしていません。いずれ退職後には官舎を出るので、どこかに家を欲しいからと蓄財もしていましたので、現金の余裕もありました。

もしWさんが、亡くなる前に事業の窮状を見て借金をなんとかしておこうと決断すれば、いまも事業は細々とでも続いてたかもしれません。残念ながら二男には、そうした対応ができるほどまでには経営者として成熟していなかったのでした。

このように、「思いを伝えたい」と相続について生前に必死に考えるのであれば、とことん、打てる手は打っておいたほうがいいのです。打ち手が不十分な場合、せっかく伝わった思いが、その後に雲散霧消してしまう可能性もあるのです。

それを思えば、生前の、それも元気なうちにこそ、事業承継を含め、相続についてきちんと考えておく必要があるのです。