養子も子として相続人になれます。実子と養子の区別はありません。ところが、再婚時にきちんと養子の手続をしていない場合は、再婚相手の子とはいえ、相続人にはなれません。この差は天と地ほどの差があります。

ちょっと複雑な話になりますが、世の中ではとてもよくあることなので、しばらくお付き合いください。

夫Aさんは、前妻との間に2人の子がいます。この2人は前妻のところにいます。再婚した妻Bさんも2人の子がいます。前夫との間の子です。

この場合、法律的に4人の子どもの立場がどうなるのかといえば、Aさんの子2人は、前妻に親権があって別の生活をしていても、Aさんの実子(嫡出子)であることは間違いないので、法律的にAさんが亡くなった場合の相続人となります。でも、Aさんの妻Bさんの子ではないので、Bさんが亡くなった場合の相続人にはなりません。

同様に、Bさんの子2人は、Bさんの前の夫の実子(嫡出子)です。ですから前夫が死亡したときの相続人ですが、Aさんの相続人にはなれません。

このとき、考え方はいろいろあります。このままでもいい場合もあるでしょう。それをBさんの前夫が望んでいるのなら、そういうことも排除する必要はないと思います。

でも、もしAさんの相続人にBさんの2人の子をしたいのなら、Aさんの養子にする手続が必要となります。そしてBさんの相続人にしたいのなら、Aさんの子をBさんの養子にする必要があります。お互いの子をお互いの養子にすると、法律上、親子として機能することになります。

養子には、特別養子縁組と普通養子縁組があります。特別養子縁組は、たとえば事情があって完全に養子先の子として育てる場合に、実親との関係を断ちきるものです。こうしなければ、あとで実親が出てきて、取り戻そうとするなど、子どもにも養子先にもトラブルが起こりやすいために、こうした制度があります。家庭裁判所に養子縁組の審判を請求して手続を進めることになりますが、原則としてこの時点で、6歳未満(0歳~5歳)の子であることとなっています。

一方、普通養子縁組。これは原則、当事者の意思で自由に縁組できます。養子が未成年者のときは、養子が自分自身や配偶者の孫や配偶者の連れ子など直系卑属でない限り、家庭裁判所の許可が必要となります。つまり、AさんBさんの場合は、役所で養子縁組の手続をすれば、OKです。

また普通養子縁組の子は、養子によって得た親と元々の自分の親の両方がいます。どちらの相続人にもなれます。

この養子縁組による相続は、現在の法律で婚姻が認められていない同性愛のカップルでも有効です。パートナーを子にするわけです。

また、養子縁組が事情によって不可能なときは、遺言によって相続人に指定することができます。法定相続人には遺留分があるので、遺言だけでその人に全財産を渡すことは難しいものの、たとえば法定相続人がいない(いても兄弟姉妹ぐらい)といった場合なども、遺言で相続人を指定することは、とても有効で、わかりやすい相続が期待できます。